「異聞・戦国録-外伝-」EPISODE・弐-5 半Be先生作

「えい!やあ!」
「えいや!とおおおー!!」
道場から子供達の気合の入った声が響いていた。その声に惹かれてか、意識的にみようとしたのか、一人の男が道場を覗き込んだ。中では数人の子供が打ち込んでいる。男の目はその中の一人の少年に留まった。じっと少年を目で追う。
「やあ!ふん!!」
『バシイイッッ!』
「ま、まいったああ!」
男の見ている少年が勝った。
「強いなあ小次郎は。」
「まだまだ。もっと強くなるぞお!」
「ひえええ。小次郎にはかなわないよ」
「ははは…」
「はははは…」
それからしばらく稽古が続いたが、男はじっとそれを見ていた。やがて、稽古が終わり、小次郎が出てくると、男は
「もし、少年!」
と、小次郎を呼びつけた。
「なんでしょう?」
意外と礼儀がいい。
「お主、強いな。いい腕だ。だが、右足の踏み込みが甘い。」
「あなたは?」
「わしか?わしはただの武芸者だ。修行の旅をしている。」
「どこかの家へ仕えないのですか?」
「うむ。。。まだ…な…。お主はどこかへ仕えるつもりか?」
「このまま行くと、佐竹の殿様に仕えることになります。」
「そうか。悪くない。だが、一つ教えてやろう。佐竹の殿様も強いかもしれんが、上総にはおなごでも強いやつが居るぞぉ。」
「お、、、おなごでですか??」
「おう。なんと言っても、あの木枯党の剣を受け止めたのだからのぉ。」
「えっ、あの木枯の刀を???」
「ほほー、知っているのか?木枯党を。武芸がそんなに好きか?では、お主がそのまま武芸に励んで強き武将になったときに、そのおなごの名前が聞こえてきたら、その者に仕えるが良かろう。無論無理にとは言わぬが。な…。さて、ずいぶんと長居してしまったな。」
そう言うと、男は立ち上がり歩き始めた。
「あ、あの…。」
「うん?」
「おじさんの名は?まだ聞いてないよ。」
「ははは。そうだったな。ワシは仁民慶征。お主が大きくなったら、お手合わせ願おう。」
笑いながらそう答えた。
「はい!」
小次郎は目を輝かせて元気に答えた。それを見ると、慶征は歩いていった。小次郎は慶征の姿が見えなくなるまで彼の背中を見ていた。
この少年、本名を真壁小次郎、後に上総介おめぐの家臣となり、木枯紋次郎、宮本雅と並び上総介家の武の柱となる「鬼真壁」こと真壁氏幹である。この年小次郎八歳。


The Saga continues... 
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