赤兎の馬 人申先生作

太い腕だ。
コイツはイカにも強そうだ。
でも、ボクは負けないぞ。
ボクは名だたる名馬の赤兎。
ボクの御主人様は天下に名だたる名将呂布様。
うん。
そうだよ。
確かに呂布様は死んじゃった。
お星様になっちゃたんだ。
ボクは天馬じゃないから
お星様にはなれないの。
呂布様には付いていけなかったの。
ボクは大地の馬だから。
でも、みんなはボクを天駈ける馬と呼ぶ。
いつかボクも天馬になって
本当に空を走るんだ。
天馬になって呂布様に会いにいくんだ。

だからボクの御主人様は天下に名だたる名将呂布様ただひとり。
誰が来たってもう、ボクの背中には乗せてあげないんだ。

そんなある日、一人の男がやってきた。
ボクの背中に乗ろうとするんだ。
イヤダ、イヤダ、乗せてなんかやるもんか。

太い腕がボクの手綱を掴んでる。

くんくん。ばふばふ。
噛んでみよう、パクっ!
・・・。
・・・沈黙。
あれ?どうしたんだろう?
騒がないぞ。
逃げないぞ。
あれ?
おかしいな。
よぉ~し、もう一度噛んでみよう、パクっ!
・・・。
・・・沈黙。

ちょっと見てみよう。
腕を噛んだまま上目遣いに顔を見る。
ひっ!睨んでる。
で、でも・・・。
優しい睨みだ。
怒っている顔じゃない。
優しい顔だ。

なんだろう?この顔は?
どうして、そんな顔をするのだろう?

そうだ。
ボクはこの男を知っている。
前にも会った事があるんだ。
関雲長と、確か名乗った。
ボクの天下に名だたる御主人様と槍を交えた事もある。
じゃあ敵か?

いや、違う。
敵ならこんな目でボクを見ない。v 優しい目をしている。
でも、どこか悲しそう。
ボクと同じ?
御主人様を亡くした目?v でも、どこか違う。
悲しい目の奥にも光を持っている。
御主人様を亡くしたんじゃないの?
うん、どこか違う。

御主人様を亡くしたんじゃないの?
御主人様は生きてるの?
御主人様は遠いところにいるんだね。
御主人様には会えないの?
御主人様にも会うんだね。
いつかきっと会うんだね。
だから目の奥にも光を持っているんだね。



今、関雲長の目つきが変わった。
一瞬、驚いた表情をしたんだ。
関雲長は小さな声でこう言った。

今、お前の瞳に輝きが生まれた。

え?
なに?
どういうこと?
ボクの目が輝いた。
ボクの目ににも光が生まれた。

どういうこと?
ボクも御主人様を亡くしたんじゃないの?
ボクの御主人様は生きてるの?
ボクの御主人様は遠いところにいるんだね。
ボクの御主人様には会えないの?
ううん、違う。
そうじゃないんだ。
ボクも新しい御主人様にも会うんだね。
いや。
ボクも新しい御主人様にも会ったんだ。

ぶひひひひぃ~ん♪


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ボク、赤兎馬!
山越え谷越え千里を走る♪
ボク、赤兎馬!
風斬り雲越え千里を駈ける♪

絶影くんは、どいててね!
的廬くんも、あっちへ行って!
ボクの前には道は無い。
ボクの後に道が出来る。

ボクの御主人、董卓様は
豪快、痛快、悪の帝王
腐った朝廷を破壊し尽くす

ボクの御主人、呂布様は
精鋭、気鋭、武の軍神
荒れた大地を駆けめぐる。

ボクの御主人、曹操様は
爆裂、激闘、乱の覇王
砕けた天下を覆い尽くす。

ボクの御主人、関羽様は
仁義、礼智、義の神様
天下の道を切り開く。

ボクの御主人、馬忠様は
・・・。
・・・。

ボクは赤兎馬!
山越え谷越え千里を走る♪
ボクは赤兎馬!
風斬り雲越え千里を駈ける♪

                                   終劇



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