「戦国の時代へ・・・」第1話 湘南B作先生作

私、中嶋太郎は、横浜の会社に勤めるごく普通の戦国時代の歴史、特に織田信長の好きなサラリーマンであった。
この事件が起こるまでは・・・。
私は、会社の後輩の本間利和、会社の同期の望月美貴さん、望月さんのペンフレンドで大坂に住んでいる沖芳子さんの4人で私の車、私の運転で山梨へドライブに来てい た。
芳子ちゃんは、同じ戦国時代の歴史が好きということで望月さんから紹介され、今回一緒に旅行に行くことになった。
芳子ちゃんは、特に織田信長、森蘭丸が好きだった。

私の車が山道に差し掛かると霧で目の前何も見えない状態に陥った。
「チュウリン、凄い霧だよ。  前が全然見えないけど、大丈夫なの。」
本間が口を開いた。
私は会社ではチュウリンとも呼ばれていた。
「そうよ、無理はしないほうがいいよ。」 望月が心配そうにしている。
望月は以前より通常ときでも私の車の運転に不安を持っていて今回も電車で行くこと を主張していた。
「この霧では、このまま谷ぞこに落ちても気づかへんわ。」と沖が言った瞬間、私たちは、車の走行に異常を感じたというより、下に地面がないような感じがした。
そのまま、私の意識は消えた。

「中嶋君、中嶋君」
私は望月の言葉で目覚めた。
「チュウリン、どういうこと!!」
本間も目覚めたようだ。
「みんな、無事?」
私が問うと、
「私は大丈夫だけど、本間君は?」
「オラも大丈夫。 だけど、なんか樹海に突っ込んじゃったみたいよ。 どうするの?」
窓の外を見ると木が生い茂り、日の光も満足に届かない状態になっている。
「それより、芳子お姉様は?」
本間が聞いた、沖はまだ目覚めていなかった。
「芳子ちゃん。」
と望月が声を掛けると、沖はやっと目覚めた。
「芳子ちゃん、大丈夫」  と私が聞くと、少し体を動かして。
「大丈夫」 と答えた。
「それで、これからどうする。  とりあえず、周りに人でもいればいいんだけど。」
私は車の外に出て周りを見渡したが、あたり一面木が見えるだけだった。
車は、何故か無傷の状態で残っているが、周りは木が遮り車の走れるような状態では なかった。
「チュウリン、なにか見えた。」
本間も車の外に出てきた。
「周りの様子見に行こうか」と私が本間に言い、二人で出て行こうとすると、
「危ないし、迷うと大変だからあまり動き回らないほうがいいよ。」と車の中から望月 の声がした。
その忠告を受け入れ私たちは車の中に戻ることにした。

しばらくたって、日が暮れかかったころになり、
「美貴ちゃん、こんな車の中でいつまでいても、なんにもならんで。  迷わんように目印付けながらでもちょっと動いたほうがええと思う。」と沖が言っ た。
「でも、日も暮れてきたし・・・。」
と望月がいい、
「じゃあ、明日になったら様子見にいこう。」と私も言い、とりあえず今日のところは 車内に留まることにした。
幸いなことに、飲食物はかなり買い込んであったので、お腹が空くことはなかった。

しばらくすると、 「あそこに灯かりが。」沖の一言で、こちらに少しづつ近づいてくる灯かりを見つけ た。
「オラ達を探しに来たのかな。」と本間が言い、  私は、車のライトを点けることにより私たちの存在が分かるようにした。
「気づかれないとまずいさかい、あの灯かりのところまで行きましょう。」という沖の 言葉で、私たちは車を出て、灯かりのほうへ向かった。
向こうが近づいてきてくれたこともあり、灯かりのところに行くのはそれほど難しく はなかった。
灯かりは、10人ほどの人が持つ松明の灯かりだった。
持っている人は、汚れた着物をまとった何か怪しげな人だった。
弓や槍のようなものを持っている人もいる。  そして、殺気がみなっていた。
汚れた着物を着た人は仲間内で何やら話し始めた。
その会話は私たちには聞こえなかったが、少なくても私たちを助ける相談をしている 訳ではないということだけは感じ取れた。
私たちは逆方向に走り出した。

すると、汚れた着物を着た人たちも追いかけてきた。
さらには風の音とともに矢が飛んできた。
私たちは必死に逃げた。
いくらか走ったあと、私たちは何とか彼らを巻くことが出来た。
「チュウリン、オラもう走れない。
助けに来た人かも知れないのに、なんで逃げるの・・・。」
本間が弱音を吐いた。
「馬鹿っ!!、助けに来た人が弓を放ってくるか。」と沖が言う、 「排他的な人なのね。」と本間がすねた。
「とにかく言い争っている場合じゃないわ。  車の場所も分からないし、どうすればいいのかしら。」
望月は途方に暮れた。
「それより、オラお腹がすいた。」と本間が言い出した。
「そんなことよりなぜ私らが攻撃されるかということよ。」沖が反論した。

「あっ、YOKOちゃん」  私は思わず声を上げた。
私の好きなアイドルタレントYOKOがそこには立っていた。
「なんや、なんかの撮影だったんか。」沖がつぶやく。 「撮影 ?」
YOKOは不可思議な顔をした。
「とにかく助かったわ。」望月も安心したようだった。
「私は、何か大きい音がして天から何かがふってきたと村の人たちが出ていったので、心配になって様子を見に来ただけですよ。  空からふってきたっていうのはあなたたちですか、それよりもあなた達は変わった かっこしていますね。  昔、日吉さんが話してくれた南蛮人のような・・・。」
「日吉、どっかで聞いた名前やな。」
沖が言った。
「とりえず、私たちの状況を説明しましょう。  ・・・・・・。」
望月は霧のために車が崖から落ちた話しから今までの話しをYOKOにした。
YOKOは、話しを聞き終わっても何がなんだか分からないって顔をした。
そして、
「私は、YOKOではなくて、一色村のみよ。」 と名乗った。
私たちがあっけに問われていると、みよは、
「今、ちょうど針売りをして、色々なところを旅している日吉さんが来ているから、日 吉さんに言えば何か分かるかも知れないわ。」といい、日吉のところまでみよは案内し てくれた。

私達の姿を見ると、
「おぬし達は、南蛮人か?」と日吉は言った。
「私たちは、日本人です。」と私は答えた。
「日吉さん、今年は何年ですか?」  
沖はさっきのみよが言った針売りの日吉から引っかかって、またもしやと思っていた ことを聞いた。
「わしは、日吉改め木下藤吉郎と名乗っているんじゃ。
そうか、年が聞きたいか、 今年になってから、年号が変わり永録となったんじゃ。 」
「やはり」と沖はつぶやいた。
永録元年とは織田信長が桶狭間で今川義元を破る、桶狭間の戦いの2年前である。
そして、木下藤吉郎とはのちの豊臣秀吉、幼名は日吉と名乗りは針売りをしながら諸国を回っていたと言うことを私達は知っていた。
「永録というと、信長の時代。」と私も続けて言った。
「それより、わしはおぬし達のことに興味を持ったんだが、話してくれんか。」 と藤吉郎が聞いた。
私達は、みよに話したのと同じ霧のために車が崖から落ちた話しをした。
藤吉郎も状況が良く分からないというような様子だったが、 「おぬし達は、これからどうするつもりだ。」と藤吉郎が聞いた。
「この時代に来たからには、絶対に信長と蘭丸に会う」と沖は言った。
「もし、歴史どおりなら藤吉郎さんについて行けば信長には確実に会えるわよね。」と 望月も言った。
「藤吉郎さんはこれからどうするんですか。」私が聞くと、
「わしは、天下の取れる大名を探して上杉、武田と回ってきたんだか、どちらも今一つ 欠けるものがあるような気がしてな。  これからは。北条、今川と回り都に行こうと思っておる。」
「出来れば、私達も旅に御一緒させていただけませんか。」私が藤吉郎に頼んだ。
「チュウリン、藤吉郎なんかについて行ってどうするつもり。」本間が口を挟んだ。
「ここにずっといてもしかたないやろ。  ついて行ったほうがいい。  藤吉郎について行くのにはしゃくに障るが。」
沖は信長、蘭丸は好きだが秀吉嫌いであった。
そんな沖もすっかりついて行く気になっている。
「まあ、歴史どおりなら藤吉郎について行くのには間違いはないわね。」
望月も藤吉郎 について行く気になったようだ。
「まあ、ついて来るのはいいがその格好は、目立ちすぎじゃ。」
「私が、この人たちの着物持ってきます。」とみよが言った。
そして、私達一行は次の日の朝、みよからもらった着物に着替え、みよと別れ相模、 小田原に向かった。
これが私達の戦国の世の旅の始まりだった。



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