「戦国の時代へ・・・」第20話 湘南B作先生作

車が霧に迷い崖から転落するという、きっかけにより現代から永録元年(1558年)織田信長が今川義元を破る、桶狭間の戦いの2年前の世界へタイプスリップしてしまった中嶋太郎達一行(本間利和、沖芳子、望月美貴)、藤吉郎(のちの豊臣秀吉)は、偶然か何かの導きか織田信長と会うことができ、中嶋太郎、本間利和、沖芳子、望月美貴の4人は客人として、藤吉郎は草履とりとして信長に召し抱えられることになった。
その後、秀吉は出世しついに一国一城の城主となり、私達も蘭丸、坊丸、力丸の教育も行うことになり、忙しい日々が続いた。

その中、信長の軍勢は家康の援軍要請にこたえ長篠城救援に行くことを決意した。
長浜城にいた私達は長篠の合戦を蘭丸、坊丸、力丸を連れ見学するために家康の居城の浜松城に向かった。
私達が浜松城に着くと、浜松城内外は信長の援軍も到着し、戦の準備に追われていた。
しかし、その戦の準備はいつもの戦の準備とは違った。
城内には丸太が積み上げられ、足軽は皆槍を持つのではなく、丸太を持って戦場に赴くというのだ。
その中、私達は薄汚れた足軽を一人見つけた。
その足軽が言うには、その足軽は武田の軍勢に包囲されている長篠城を命からがら逃げ出し、徳川の援軍要請に来たと言うのだ。
私達は、その浪人を家康、信長が揃った軍議の場に連れて行った。
織田、徳川の連合軍はすぐにでも出発できる準備を整えつつあったために、足軽に対し、すぐにでも援軍を送る旨伝えた。
信長、家康は足軽に休んでいくように勧めたが、その足軽はすぐにでも取って返し長篠城に立てこもっている兵士に、援軍が来ることを伝えると言って聞かなかった。
その足軽の結末は歴史を知っている私達にも察することが出来たので、私達も必死に止めたが、その足軽は死を恐れずに目を離した隙に戻っていった。
その足軽は戻る途中、武田方に捕らえられ、長篠城に立てこもる兵に対し、織田、徳川の援軍は来ないといったら命を助けると言われたが、正直にすぐにでも織田、徳川の援軍はすぐにでもくると答え、長篠城に立てこもる兵士は歓喜の声を挙げたが、その足軽は斬首された。
その時、織田、徳川の連合軍は近くまで来ていた。
織田、徳川は設楽原に陣をひき、その陣の前方に足軽がやりの変わりに持ってきた丸太により防備柵を築いた。
私達は少し離れ、戦の全容が見えるところで見守っていた。
武田軍は織田、徳川の連合軍を完全に侮っていた。
史上最強を誇る武田の騎馬軍団を持ってすれば、あの程度の防備柵簡単に突破できるものと確信していたのであった。
武田騎馬軍団は猛然と織田、徳川の陣の前に築かれた防備柵にさっとうした。
織田、徳川の連合軍は防備柵の向かうから3000丁の鉄砲を駆使し、隊を三つに分けて順番に鉄砲を撃ち掛ける戦術を取った。
次から次へと撃たれる鉄砲の弾の中、史上最強を誇った騎馬軍団もなすすべが無かった。
織田、徳川の連合軍はほとんど無傷で武田騎馬軍団を壊滅したのだ。
その光景は離れたところから見ていた私達には良く見て取れた。
しかし、次から次へと倒れていく馬や人を見て私達はそのむごさを感じずにもいられなかった。
馬好きの芳子などは見ていられなかったであろう。
この戦いをのちに長篠の戦いと言い、日本の戦争の仕方を槍や刀から鉄砲へと変えて行くものだった。
私はこの戦が終わると、寄りたいところがあるといい、芳子や美貴、蘭丸たちと別れ、利和と甲斐の国へ向かった。
長篠の戦いで打ち負かしたとはいえ、まだ敵国甲斐の国は危ないと言うことで、今まで幾度となく助けられた、森可成の息子で蘭丸の兄、森長可を付けてくれた。
長可は、可成に似て武勇に優れ鬼武蔵とあだ名されるほどの人物である。
長可も私達のともを快く引き受けてくれた。
私達は、甲斐の国の山中を入っていった。
そして、目的の場所にたどり着いた。
そこは、私の車のあるところ、現代からタイムスリップしてこの時代にやってきた場所だった。
私は車に乗り込みエンジンをかけてみた。
エンジンはしっかりとかかった。
私はこの時代に来た時からそのまま置き去りにしていたこの車がどうなっているのか気がかりでここまでやってきたのだ。
「やっぱり、俺なんかが年取らないだけじゃないで、現代から来た車も老朽化しないんだね。」
私は、エンジンを一度切り、利和に言った。
利和が答える前に、なにやら林の方から物音がした。
長可が身構えた。
私達も身構えた。
すると、林の中から1人の浪人風の男が出てきた。
「それがし、決して怪しいものではござらん。」
その、男は愛想よく私達に語りかけてきた。
男は続けて
「それがし、このあたりに住む木枯らし紋次郎と申すもの、以前よりこの鉄の塊が何者なのが気にかかっていてのう。
いや、この鉄の塊のことは誰にも話していないし、他の誰にも気づかれていないはずじゃ。」
「これは車と言って、馬よりもずっと速く走れるんだよ。」
利和が答えた。
「馬より早い・・・。」
紋次郎は驚いて声をあげた。
そして、笑いながら、
「馬より速い、それはいくらなんでも極端ではないかのう。」
紋次郎はまったく信じようとしなかった。
「一日もかからずに、京や堺にだって行けるんだよ。」
利和が言うと、
「おねがいじゃ、是非その乗り物にわしを乗せてくれぬか。」
紋次郎は手をついて願い出た。
「でも、この林の中じゃあ、動かすのは無理だな。
平らな道でなくては動かすことは出来ないんだよ。」
次は私が答えた。
「そうか、平らなところでなくては動かないか。」
紋次郎はさっきまで輝いていた目が、すっかり落胆したものになってしまった。
「それは、そうとおぬし達は武田のものか?」
紋次郎は聞いた。
「拙者、織田家中のものである。」
長可が答えた。
「織田家・・・。」
紋次郎は表情を変えた。
「あの卑怯者の織田か。
あの合戦の前までは少しは骨のあるやつだと思っていたが・・・。
正々堂々と刀や槍を交えるのならともかく、遠くから鉄砲など言うもので討ち取るなどというこそくな手段を使いおって・・・。」
紋次郎は長篠の合戦の噂を聞いてすっかり織田嫌いになってしまったようだった。
「信ちゃんは卑怯者なんかじゃないよ。」
利和は反論した。
しばらく、利和、長可と紋次郎は言い争っていたが、
「ここでいつまでも言い争ってても仕方ないよ。」
と私が止めた。
車の状態も確認できたということで、私達は紋次郎を残し岐阜に向かって帰っていった。
もちろん、帰る前に車のことは他言無用と紋次郎に言い、紋次郎もこのことだけは承服した。



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