「戦国の時代へ・・・」第3話 湘南B作先生作

車が霧に迷い崖から転落するという、きっかけにより現代から永録元年(1558年)織田信長が今川義元を破る、桶狭間の戦いの2年前の世界へタイプスリップしてしまった中嶋太郎達一行(本間利和、沖芳子、望月美貴)と藤吉郎(のちの豊臣秀吉)は相模の国小田原を経由し、駿河の国、駿府に差しかかっていた。

「小田原よりもなんかにぎやかでいいわ。」
「美貴ちゃんの言うとおりやわ。なんか活気があって、楽しい気分になるわ。」と沖もなんか嬉しそうだった。
「チュウリン、城はおらの小田原城の方が全然いいよ。」
「小田原城は完全に本間のものになってしまったな。
でも、この時代にある城の中、信長の安土城が完成するまでは小田原城は天下一の城だと俺も思うよ。」と私は本間に答えた。
「それじゃあ、芳子御姉様。お約束どおり、馬屋行こう!!」と本間が馬屋に誘った。
「藤吉郎さんはどうしますが?」
私は聞いた。
「馬を見ることも、仕官先を決める上で重要じゃな。
わしも一緒に行くとしよう。」と藤吉郎は答え、私達は馬屋に向かった。

馬屋に着くと、
「なんや、この馬は。こんな馬で戦が出来るのか?
今川義元が輿で出陣するする気持ちがわかるわ。」と芳子がボロボロに駿府の馬をけなした。
確かに馬に詳しくない私でも良い馬には見えなかった。
「芳子ちゃん、ここでそんなにけなしちゃまずいわよ。」と望月が沖をなだめたがすでに遅かった。
「今川の殿様を愚弄するなどゆるせぬ。」3人の武士が私達に向かい刀を抜いた。
いきなりのことで、私達が動けずにいると、藤吉郎はまっさきに私達をおいて逃げ出した。
「さる!! 私達をおいて逃げるなんて許せん。だから、さるは嫌いやわ。信長様だったからきっと助けてくれるのに。」
沖が叫んだ。
そんな沖の叫び声などものともせずに、相手の武士が刀を振り上げた。
もちろん、私達が武器を持っているはずもなく、もう終わりかと思った。
その時、私達の前に1人の武士が立ちふさがり、次の瞬間刀を振り上げたはずの3人の武士は倒れた。
私達が、あっけにとらわれていると、
「みね打ちだ、心配ない。それより、ここにいては危ない。」と助けてくれた武士が言い、私達を逃がしてくれた。

私達は町外れの野原に逃れた。
「ありがとうございます。お名前を・・・。」望月が聞いたが、
「いや、拙者名乗るわけには行かぬ。」と言い、その武士は去っていった。
武士が去ると私達は腰を下ろした。
「あの人どっかで見たことあるような気がするんやけど。」と沖は言った。
沖はしばらく考えていたが、
「私達、この時代に来たばかりよ。知り合いなんかいないわよ。でも、かっこ良かったな。」と望月がさっきの場面に浸っていた。
「おらも、あの人かっこいいと思う。」
本間も助けてくれた武士を気に入ったようだった。
「おぬし達、無事だったか。」
藤吉郎が現れた。
「さる!! 私を見捨てて逃げたな。」と沖は怒った。
逃げたといっても、藤吉郎は私達の事が気になって遠目に私達を見ていた。
「すまん、ああいうときは逃げるが勝ちじゃ。おぬし達も、逃げるのだけは早いほうがいいぞ。」
藤吉郎は誤ったが、そんなに責任を感じている様子ではなかった。
当然、沖の怒りは収まらなかった。
「それより、藤吉郎さん。私達を助けてくれた人、どっかで芳子ちゃんが見たことあるような気がするって言うんだけど知ってる?」
望月は沖の怒りをそらす意味でも聞いた。
「知っているってことはないが、甲斐の国で見たことあるぞ。きっと、武田の家臣だろうな。」
「オラもそういえば、小田原でみたような気がしないでもない。」と今ごろになって本間も言った。
「あやつが、武田の家臣とすると、同盟を組んでいながら今川、北条の動きを探っているのか。
城は小田原、町は駿府。
だが、馬があれでは上洛したとしても、この町の経済力をもってしても天下を維持できるとは思えぬ。
わしは決めたぞ。
武田に仕官する。」
藤吉郎は武田の仕官を決意したようだった。
「すまん、話しが聞こえてしまった。」
私達と少し離れたところに腰を下ろしていた浪人が話し掛けて来た。

「おぬしは、馬を見て仕官先を決めるのか?わしは、これじゃ。」といい何かを私達の前に突き出した。
「鉄砲!!」
私達は声を揃えて言った。
「おぬし達は、鉄砲を知っていたか。わしは、この鉄砲を使いこなすことが出来る人に仕官する。」
と浪人は熱っぽく語った。

「あなたも仕官先を探しているのですか?」と望月は聞いた。
「ああ、わしも仕官先を探しておる。鉄砲を使いこなせて、わし明智光秀を生かしてくれる大名を探しておる。」と浪人が答えた。
「えっ、もう一度。お名前教えてください。」と私は聞き返した。
「明智光秀じゃ。わしの名前がどうかしたか。」と光秀は聞いた。
「みっ、みっちゃん。」
今まで不機嫌だった沖の機嫌はすっかり直った。
「私、信長や蘭丸に会いたいのは当然だけど、みっちゃんにも会いたかったのよ。」
沖はすっかり感動していた。
光秀は、今までみっちゃんなんて呼ばれたことはなく照れていた。
本能寺の変の後、山崎の合戦で雌雄を決する秀吉と光秀の出会いであった。
「わしはこれから先、都に上るがおぬし達はどうするんじゃ。」光秀は言った。
「私達もこれから都に向かいます。御一緒しましょう。」と望月も言った。
私や沖、本間もそのつもりだった。
「いや、わしは都にはいかん。これから、甲斐に戻り武田に仕官する。」と藤吉郎ははっきりと言った。
「チュウリン、さるは信長に仕官させなきゃまずいんじゃないの。武田なんて言っているよ。」と小声で本間がささやいた。
「さる、都に向かうって言ったやろ。」と沖は藤吉郎に強い口調で言った。
「ちょっと、ちょっと、芳子ちゃん。」と沖をなだめて、すごし考えた後に、「ねえ、こうしない。
武田に仕官するのは良いけど、甲斐に行ったらしばらくは戻ってこれないでしょう。
武田に仕官するってこと、尾張のお母様に報告しておいたほうがいいんじゃない。」
と望月は藤吉郎をとりあえず尾張に向かうように説得した。
「よく、わしのおふくろが尾張にいるってこと知ってたな。」と疑問を感じていたが、望月の説得に藤吉郎も折れた。
そして、尾張まで方向が同じこともあり、光秀と私達は一緒に旅をすることになった。
「学校の教科書にも載っている豊臣秀吉と明智光秀と一緒に旅するなんて、おら達凄くない。」と本間も喜び、沖ももちろん、私や望月も光秀と一緒の旅を嬉しく思っていた。
私達は軽快に尾張に向けて駿府を後にした。



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