「戦国の時代へ・・・」第10話 湘南B作先生作

車が霧に迷い崖から転落するという、きっかけにより現代から永録元年(1558年)織田信長が今川義元を破る、桶狭間の戦いの2年前の世界へタイプスリップしてしまった中嶋太郎達一行(本間利和、沖芳子、望月美貴)、藤吉郎(のちの豊臣秀吉)は、偶然か何かの導きか織田信長と会うことができ、中嶋太郎、本間利和、沖芳子、望月美貴の4人は客人として、藤吉郎は草履とりとして信長に召し抱えられることになった。
その後藤吉郎はねねとの祝言をあげ薪係、台所方に出世し、芳子も馬の世話、美貴は洋服屋を始めていた。

「チュウリン、ほら今日もいいもの取ってきたよ。」
利和が食べ物を運んできた。
「本間君、いつもいつも美味しい物食べれるのは嬉しいけど、持ってきちゃっていいものなの。」
美貴が心配そうに言った。
「大丈夫だよ。ちゃんと台所方のさるに許可をとって持って来ているんだから。
さるが台所方になって本当に良かったよ。」
「しかし、家臣の中では強引に倹約させているさるに批判があるみたいやろ。」
芳子が言った。
「なんか、以前お城に出入りしていた商人からも、商人を通さずに産地直送に仕入れるようにした関係で批判があるみたいだしね。
まあ、そういうやり方もあるよとアドバイスしたの俺なんかだし、ねねっちと結婚して一生懸命仕事しているところは分かるんだけどね。」
私は藤吉郎をフォローした。
「そんなことより、倹約しているわりにはうちらのところには結構いいものまわしているさかいな。」
芳子は反論した。
「大丈夫だよ、犬のところにも回しているし、さるなんか毒味とか言って信長さまの料理ほとんど食べているって話しだよ。」
利和は言った。
「まあ、結果として倹約はかなり出来ているみたいだし、一部の人には結構かりを作っているからな。
とりあえず、いい方に転がっているんじゃないかな。」
私が言うと、
「ねねさんは、聞いた話しによりと藤吉郎さんが闇で回した食べ物貧しい人や子供達に分けたりもしているらしいよ。」
と美貴が続けて言った。
「えっ、本当!?
ねねっちって偉いんだね。」
利和はねねに感心したようだった。

そこで、襖が開いて、信長が入ってきた
「みんな揃っていたか?」
「信長様、改まってどうしたんですか。」
美貴が聞くと、利和は慌ててさっきの食べ物を隠した。
「利和、今何を隠した?」
信長は厳しい口調で言った。
「えっ、・・・」
利和が適当にごまかそうとすると、
「どうせ、さると結託して持ってきたものだろう。
倹約は上手くいっているようだし、そんな事をいちいち咎めに来たわけではない。
それどころか、さるは功績を認めて足軽大将に取りたてようとしておる。」
信長は言った。
「さるが足軽大将?」
利和が驚きの声をあげた。
「利和、この話しはまだ決定ではないから、・・・。
おぬしに喋るなと言っても無駄か。」
信長は笑いながら言った。
利和は、
「さるが台所方じゃなくなると今までみたいに食べ物取って来れないから困るんだけどね。」と言い残し急いで部屋を出て行った。 なんだかんだ言っても、利和と藤吉郎は仲が良くじっとしていられなくなって、おそらく藤吉郎かねねのところにでも報告に行ったのだろう。

「そうじゃ、今日はそんなことを話しに来たわけではないんじゃ。
うるさいやつもいなくなったし事だし、ちょっと話しておきたいことがある。」
信長は真剣な顔になって言った。
「なんでしょうか?」
私が聞くと信長は話し始めた。
「先日、三河の松平元康から同盟の使者が来た。
元康とは幼き頃、尾張に人質に来ていて会ったことがあるが、幼いながらもしっかりしたやつであった。
わしには養父道三がなくなった後、盟友と呼べる者がいない。
元康とは同盟を組みたいが、わしは遠慮したり気を使ったりするのが一番いやじゃ。
さらに、同盟を組んだところで絶対に裏切らないと言う保証はない。
濃(信長の正室)などは道三からわしに嫁ぐとき懐刀を渡されてきたわ。
そこで、そなたたちの時代の同盟というものを聞きたいんじゃ。
今の時代のように養子縁組などをするのか?」
「私達の時代の国同士の同盟には、養子縁組みなどはありません。
双方で条約を結び、物資や金銭をやりとりし、戦争が起こったときは平和の名のもとに複数の国で兵を出します。」
私が答えると、
「そち達の国では平和の名のもとに戦争をしているのか?
また、同盟を組んでいる国が裏切ったりすることはないのか?」
信長は続けて聞いた。
「私達の時代の私達の国では、戦争を行わないという法律があります。
しかし、政治を行っている人たちは外国、特に同盟を組んでいる強国に対しては腰が低く言いなりのような状態です。」
私が答えると、
「それで、その国の人たちは納得しているのか?」
「そのまま流されているような人がほとんどです。」
私が答えると、
「強国に立ち向かおうとする者はおらんのか?」
信長は声を荒げて言った。
「ほんまや、まあ私もあの強国、それにいいなりになっている私の国もはらたっているんやけど。」
芳子も声を荒げて行った。
「俺達の時代の俺達の国には強国よりの考えを持っている人のほうが多いけどね。」
私が言うと、
「でも、最近は強国に反対する人も増えてきているような気が・・・。
平和の名のもとに物資や金銭をやりとりを規制したり、戦争を起こしたり、自分の国でやっていることは棚に上げて好き放題やっているところがあるからな。」
望月が言った。
「平和の名のもとに戦争をするか。
また、強国になって色々な面で圧力をかけることも分かった。」
信長がそうい言い残すといつものように席を立って部屋から出ようとした。
「信長様、まさか、私達の時代の強国のような国を・・・。」
私が信長を止めた。
「あの、強国のようになっては周囲から反感をかい、いい結果は得られません。」
望月も止めた。
「そうじゃろう、もしわしがそちたちの時代のそちたち国に生まれたら 強国の言いなりなどにならず、己を滅ぼしてでも強国に立ち向かっていくぞ。
わしはこの国が好きじゃ。
この国のために精一杯の事をしたい。」
信長は言い、しばらく間をおいた。
「わしは、鬼にならねばならぬのかも知れん。
周りの反感を己で全部受け止め鬼にならねばならぬのかも知れん。
そうしなければ、これから先進んでいけぬわ。」
そう言い残し去って行く信長の後ろ姿は寂しそうに見えた。
その日の夕暮れから夜にかけて清洲をカミナリとともに暴風雨が襲った。

翌日、清洲城を見てみると城壁がかなりの区間に渡り崩れ落ちていた。
昨日の暴風雨で壊れたのだろう。

私達が野次馬とともに壊れた城壁を見ていると、
「そんな工事の仕方じゃあ。いつまでたっても直らんわ。」と城壁の修理をけなすものがいた。
藤吉郎だった。
「チュウリン、さるがまたあんな偉そうなこと言っているよ。」
利和が言った。
「藤吉郎は藤吉郎の考えがあって言っているんだから、ほっとけばいいよ。」
利和をたしなめた。
「信長様がきたで。」
芳子が言った。
「さる、城壁の修理に文句があるようだな。
お前なら、何日で終わる。」
信長が聞いた。
「3日もあれば終わります。」
藤吉郎が答えると、
信長は高笑いした後、厳しい口調になり、
「城壁の修理、藤吉郎に申し付ける。
もし、出来ねばその首ないと思え。」
という言葉だけ残して去って行った。
それと同時に野次馬達も藤吉郎を馬鹿にしたような言葉を残しながら去って行った。
「さる、本当に3日なんかで出来るの。」
利和は藤吉郎のところにより心配して言った。
利和は私達の顔色もうかがったが、私達は知らん顔をした。
「大丈夫。
おぬし達が教えてくれた、効率の良い方法をとれば必ず出来る。」
藤吉郎は自信ありげに言った。
私達は今回の事にたいしては手を貸さず口もださずに黙って見ていることにした。
不安がって、私達のところに相談に来たねねに対しては大丈夫だと励ましたが。

そして、3日後、見事藤吉郎は塀の修理をいくつかの組に分け競争させることにより早く工事を完了させる割普請によって塀の修理を完了させた。
この功績により、藤吉郎の名から秀吉の名に変えることを信長から許された。

また、信長も松平元康との同盟の決心がつき、条約をもって同盟を結んだ。
この条約の中にはこの時代のしきたりである縁組みも盛り込まれた。
これにより、織田家と松平家は軍事、経済ともに同盟関係が出来た。

この同盟がなると、美濃攻落のために信長は居城を小牧山に移した。
私達も信長のいない清洲にいても仕方ないので、望月の洋服屋とともに一緒に小牧山城に移ることにした。



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