「戦国の時代へ・・・」第13話 湘南B作先生作

車が霧に迷い崖から転落するという、きっかけにより現代から永録元年(1558年)織田信長が今川義元を破る、桶狭間の戦いの2年前の世界へタイプスリップしてしまった中嶋太郎達一行(本間利和、沖芳子、望月美貴)、藤吉郎(のちの豊臣秀吉)は、偶然か何かの導きか織田信長と会うことができ、中嶋太郎、本間利和、沖芳子、望月美貴の4人は客人として、藤吉郎は草履とりとして信長に召し抱えられることになった。
織田信長は天下布武を旗印に天下統一に向け動き出した。

「もしや、おぬしたちは?」
私と利和が岐阜の町を散策していると、一人の武士に声をかけられた。
私たちが、浮かぬ顔をしていると、
「駿府であった明智光秀でござる。」
名前を聞いて私と利和も思い出した。
風貌は変わっていたが明智光秀の名前を私たちが忘れるわけもなかった。 
私達が思い出したのが分かると、
「おぬし達は、あのころとまったくかわらないな。」と光秀は続けた。
光秀と私たちが別れたのは永禄元年、現在は永禄十年、別れてから十年たとうとしていた。
その一言で、私達は1つの重大なことに気がついた。
10年の間、信長や秀吉など回りの人たちは年をとっていっているが、現代からタイムスリップした私達はこの時代に来てから年をとっているように思えなかった。
「まあ、光秀殿。
ここで立ち話もなんですから。」
と言い、私は光秀を岐阜に移転した美貴の洋服屋に誘った。

美貴の洋服屋では、偶然にも美貴、芳子以外にも、ねね、秀吉、利家、おまつなども揃っていた。
私達が光秀を連れて行くと、別れた後の私達のことや光秀のことを語り合い話しに華が咲いた。
光秀は別れたあと、都に上り、将軍足利義昭の家臣となり今回はこの義昭の使いとして信長に会いに来たという。
話し込んでいるうちに日が暮れたこともあり、翌日に光秀を信長に私達(私に利和、美貴、芳子)で会わすことにした。
その日は深夜まで一同は語り合っていた。

翌日、私達は光秀を城の信長のところまで連れて行った。
信長はことのほか上機嫌だった。
光秀は、信長に対し足利義昭の上洛を促す書状を手渡し、上洛を促した。
「信ちゃん、上洛なんてすごいじゃん。
オラも京行きたい。
望月さんも都の方が洋服屋儲かるよ。」
利和も信長に上洛の催促をした。
「美貴ちゃんの店って儲かるもなにも客おらんで。」
芳子は突っ込んだ。
「光秀殿、義昭様にお伝えあれ。
この上総介信長が必ず上洛し義昭様を将軍職におつけし、天下の争い平定する。
まずは、この岐阜に義昭様をお連れしてくだされ。」
その信長の返事を聞くと、光秀は都にとって返した。

その後、足利義昭は明智光秀、細川藤孝を伴って岐阜にやってきた。
義昭歓迎の宴には、私達も参加した。
ねねやおまつは接待役という名目で参加したが、私たちはこの戦国時代の将軍を迎えての正式な宴というものを見てみたかったので、信長に無理を行って参加させてもらった。
信長は、自分にできる限りの財を使用して歓迎した。
宴は義昭も上機嫌で滞りなく終わった。
しかし、宴が終わった後、利和一人不機嫌だった。
「ご馳走食べられたし、結構いい宴だったのになんでそんなに機嫌悪いの?」
私が聞くと、
「いくら相手が将軍だって、なんで信ちゃんがあんなにへりくだるんだろう。
信ちゃんがいなかったら、あの人一人で何もできないんでしょう。
偉そうで、なんかいやな感じのいけずじじいだよ。
まあ、みっちゃんの殿だから悪くは言いたくないけどね。」
利和は義昭が気に食わないようだった。
「将軍様なんだからしかないわよ。」
と美貴が言い。
「信長様だって、今だけ利用するためにへりくだっているだけやで宴が終わると、信長は上洛の準備を始め、芳子も馬の調達や世話で忙しくなっていった。
そんなある日、利和がごそごそと旅支度を始めた。
「本間、どっか行くの?」
私が聞くと、
「どっか行くのじゃないよ。
チュウリンも行くよ。
芳子お姉さまも望月さんも早く支度して。」
「どこ行くんや。」
芳子が再び聞いた。
「小谷城だよ。
信ちゃんが遊びに行くみたいだから、オラ達もついて行くの。
さるも行くんだって。」
利和は答えた。
「お市様にも会えるわね。
私も行こうかしら。」
美貴も行った。
「それじゃあ、俺達も支度しようか。」
と私も旅支度を始た。

翌日、私達は信長について小谷城に向かった。

小谷城では、浅井長政、市夫婦が最高のもてなしで迎えてくれた。
一室に信長を始め私達に秀吉を招き接待してくれた。
「なんかこの城、山の上にあるから来るまでに苦労したよ。
岐阜城よりも上にあるんじゃないよ?」
利和が本当に疲れた顔をして行った。
その時、1人の女の子、私達の周りによってきた。
その後を追うように一人の少年が部屋に入って来た。
「茶々、」
その少年は女の子を呼び戻そうとした。
「万福丸、茶々を連れて向こうで遊んでおいで。」
市がたしなめた。
この2人は市と長政の間にできた子供だった。
茶々とはのちの淀君である。
秀吉とはこのときが初対面だった。
「オラも一緒に遊んでくる。」
利和は言い、一緒に部屋を出て行った。
その後を
「子供の相手は私に任せて。」
と芳子が追いかけていった。
芳子は現代で保母の経験もあった。
芳子が出て行くと、信長は本題に入ろうとした、
「信長殿、・・・。」
信長が口を開こうとしたのを長政は制止した。
「言わずとも、分かっております。
我、浅井の軍も喜んで上洛戦。
天下布武の軍に参加させていただきます。」
「長政殿は、言わずとも分かっていただけたか?」
信長は高笑いをした。
「しかし、1つだけ頼みがあり申す。」
長政は言った。
「頼みとな。」
信長は聞き返した。
「我が浅井家と朝倉家とは長年の同盟の関係、朝倉に戦を仕掛けることだけはなさらんでくだされ。」
長政は言った。
「我、願いは、この日の本を統一すること、無駄な戦はせぬ。」
信長は断言した。
「それを聞いて、安堵しました。」
長政はほっとした顔をした。
「織田家、浅井家、そして徳川家ともに絆を深め天下布武を果たしましょうぞ。」
信長は声を弾ませて言った。

「ああ、望月殿。
兄からの書状に書いてある洋服というものを私にも作ってくだされ。」
市は美貴に言った。
「喜んで作らせていただけいますわ。」
美貴は答え和やかに話は弾んで言った。

夜になると利和に芳子も戻ってきて、長政は宴も用意してくれた。
「市様、さるはずっとお市様のことが好きだったんだよ。」
利和の発言に信長、長政はびっくりしたが、
「岐阜に戻ってねね様に報告しなくてはいかんわ。」
と芳子が言うと、一同に笑いがこぼれた。
宴が終わりのころになると、利和も長政のことを「政ちゃん」と呼ぶようになって行った。

夜更けまでの宴も終わり、翌日には私達は岐阜に戻った。

そして、準備が整った信長は永禄11年の9月上洛天下布武に向け岐阜を出発した。



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